朝露の約束
あとがき
「朝露の約束」をお読み下さり、本当にありがとうございます。
本作は私にとって四作目、長編では二作目に当たります。前作である「BLACK=OUT」とは百八十度違った、全く(とは言えませんが)戦闘シーンの無い、情景描写が求められる作品ということで、未熟な書き手である私にとっては、些か荷が勝ちすぎた感があります。
出来る限りをやったつもりですが、どうでしょうか、お楽しみ頂けましたでしょうか。
それでは、裏話なんかも含めてつらつら書いていこうと思います。
本作の肝は、「“悪魔”になる女の子」です。
これは過去に日記にも書いたように、私が見た夢が発想の元になっています。
可愛い女の子がいて、でもその子は“悪魔”になって、“悪魔”を追い出そうとするんだけど、実は“悪魔”の方が女の子の本当の姿だった、という、夢の内容はそんなものでした。
初期のプロットからあまり外れてはいませんが、真露の兄・慎太郎の設定が無かったり、“悪魔”の使い魔として、戦闘用の式神「楓」の存在があったりと、今 よりはバトル寄りの内容でした。特に楓は設定画まで作っていたんですが……プロット変更に伴い、存在自体が消滅。デザインそのものは気に入っているので、 いつか日の目を見る日が来るかもしれません。
本作のテーマは、見ての通り「選択」。キャッチコピー(ランキングサイトの紹介文用)は「選択を、悔いるな」です。
実はプロットを作り始めた段階で、既にメインターゲットの読者層を「十五歳前後」と定めていたのです。
作中の主人公たち四人組の年齢設定が「中学三年生(十五歳)」なのも、それ故です。
中学三年生といえば、恐らくは多くの人が人生最初の「大きな選択」を迫られる年齢です。本来はテーマを明確にするために用いられる「選択」を、そのテーマ そのものに据えるのはちょっと冒険だったかもしれませんが、結果としてはまあ及第点くらいにはなったのではないかな、と思っています。
しかしな がら、作中では「受験」に関する話題はほとんど出てきていません。これは、やはり主題となるのは陽介と真露の“悪魔”を巡る話であるということ、枚数制限 を自己に課しながらの執筆だったため、枚数的余裕がほとんど無かったため、受験の話題を挿入できなかったこと、そしてそれ故、学校でのシーンを極力廃した 事が理由として挙げられます。
苦労した点をいくつか。
まずプロット段階では、“悪魔”の能力とその詳細の設定を纏めるのが難しかったですね。何でもアリな能力ですが、どの程度の制限を設ければシナリオを破綻無く進められるかが問題でした。
執筆中は、やはり情景描写。これに尽きます。あまりに慣れない文体にストレスが溜まり、つい途中で戦闘シーンを入れてしまいました。いやぁ、気持ち良かった。
それでは、各キャラクターについて一言。
葉月陽介
脇目も振らない一直線少年です。「カッコいいところが無い」と言われたりもしますが、いや、これがいいんですって(笑)
最後は、普通の人では出来ないような選択を、ちゃんと決めます。この時のために彼は存在してるんでありますよ。
霧代真露
人当たりがいいのに消極的な、ちょっと書きづらい女の子です。まだいくらか(“悪魔”絡みで)裏設定が残っているのですが、伏線の未回収が気にならなければいいのですが……。
エピローグの少女に関しては、ご自由にご想像下さい。明確な設定はしていませんので。
東大路茅
男前(笑)に見えて実は真露より乙女ちっくな巫女さんです。「BLACK=OUT」の命といい、どうしてんぼは巫女さんが好きなんでしょうか。
実は一番裏設定が多いのが東大路家で、伯父である唐塚浩二が、茅の母親である東大路希の死に関わっていたり……と、それだけで短編くらいは書けそうなくらいに残っています。
御剣兼人
二枚目で頭の切れる、しかし三枚目を演じている超越中学生です。中三離れしている、と文句を言われました。いいんです、カッコいいから。
名前の元ネタは故・塩沢兼人氏より。エピローグでの茅との関係が気になった方がいらっしゃるかもしれませんが、なし崩し的に付き合っているという設定になっています。
最後にもう一度、お読み下さって本当にありがとうございました。
もし喜んで頂けたなら、そして何かを感じ取って頂けたなら。
これ以上の幸せは、ありません。
まだ何も決まっていませんが、次回作も読んでいただけたら幸いです。
それでは、また。
二〇〇六年 八月十八日 んぼ